ゲーム開発の枠を飛び越え、コンテンツの可能性を拡張するサウンドを。『アナデン』サウンドチームがバンド活動をはじめた理由

シングルプレイ専用スマートフォンRPG『アナザーエデン 時空を超える猫』(以下、『アナデン』)のサウンドチームには、正社員として働きながら、バンド『EDEN's CLINE(エデンズクライン)』のメンバーとして活動する人たちがいます。2026年7月には、アナザーエデン音楽の祭典2026「Verses from the Astral Archive」がパルテノン多摩で開催され、彼らもステージでアナデンファンに向けた熱い演奏を届けました。

今回は、『EDEN's CLINE』の3名に話を聞きました。どのようにして正社員バンドが結成されたのか? そして『アナデン』が開発当初から掲げてきた“古き良きゲームミュージック”の魅力に迫ります。

井上 幹
スタジオ本部 / Sound グループ シニアマネージャー

2013年、新卒でグリー株式会社(現:グリーホールディングス株式会社)に入社し、社内異動を経て現在のサウンドチームへ。Soundグループのマネジメントを担う傍ら、『アナデン』のメインストーリーのサウンドディレクター兼コンポーザーを担当。そのほか、新規タイトルのサウンド制作にも携わっている。

山上 毅
スタジオ本部 / Sound グループ / 著作権管理 チーム リードサウンドクリエイター

ITベンチャーや声優事務所、コンサート等のコンテンツ事業を経て、2014年にグリー株式会社(現:グリーホールディングス株式会社)へ中途入社。ライトフライヤースタジオでは、『アナデン』のリリース時(2017年)より、サウンドディレクションを担当。メインストーリー第2部以降のコンポーザーとして楽曲制作や、2020年開催のアナザーエデンコンサート『a refrain of times』、2021年開催の『for fragile time』では音楽プロデュースを担当した。

林 茂樹
スタジオ本部 / Sound グループ / Sound 3 チーム マネージャー

2002年よりコンシューマーゲーム開発会社にてゲームサウンド制作に携わる。2018年にグリー株式会社(現:グリーホールディングス株式会社)へ入社し、同年よりライトフライヤースタジオにて、『アナデン』のサウンドディレクター/コンポーザーとして、サウンドディレクションおよび楽曲制作を担当している。

最大級規模の音楽祭は、新しい体験への始まりだった

── アナザーエデン音楽の祭典2026「Verses from the Astral Archive」お疲れ様でした! 率直な感想をお聞かせください。

林これまでのコンサートと比べても最大級の規模でしたね。今回はコンサートディレクターも担当していたので、幕間のキャラクターボイス演出からセットリストの調整まで、半年以上前から毎日のように準備を進めてきました。正直……とても大変でしたが、無事に終演できてほっとしている気持ちが大きいですね。

井上今まで「EDEN's CLINE」のライブはトークセッションとセットが多かったのですが、今回の公演は演奏がメインでした。トキノワスレモノ、ホシノオトシモノ、ゲストアーティストのみなさまとの共演は正直かなりのプレッシャーだったんです。僕たちは”正社員バンド”なので、バンド活動が本業ではないんですよね。ご来場いただいたお客さまから「プロ」としての演奏を期待されている中で、その期待に見合ったコンテンツを提供しないといけない。そうしたプレッシャーの中で、たくさんのペンライトがキラキラと輝いている客席の光景は圧巻でした。これまでの苦労が報われるというか、最高の体験になりましたね。

山上来年10周年を迎える『アナデン』ですが、開発当初からコンサートなど音楽の魅力を発信する活動には力を入れてきました。それを形にしていくのはなかなか大変ではあったのですが、ここまで大規模な音楽祭ができたのは、ファンのみなさまとアーティストの方々と「コンテンツ愛」の賜物だろうなと感じています。ゲーム音楽という枠を超え、コンサートやライブという新しい体験へと楽しさを広げることができました。

── みなさんは、ライトフライヤースタジオの正社員として働きながらバンド活動を行っているんですよね? どのようにしてバンドが発足したのでしょうか。

山上僕たち3人とギターのMASAさんの4名で、日々残業しながらバンド活動に勤しんでおります。

一同ハハハッ(笑)。

山上2024年の暮れに発足しているのですが、きっかけとしては、『アナデン』をゲームコンテンツという領域に止めるのではなく、サウンド面からも魅力を発信していきたいという思いがありました。そのためには、サウンドクリエイターの個性や“らしさ”を発信していくことが大切だと感じ、バンド活動を少しずつ始めていき、こうして今回の音楽祭出演へとつながっていった次第です。

2026年9月17日(木)に発売した『アナザーエデン ビギンズ』でも「古き良きゲームミュージック」を

── みなさんの本業でもある『アナデン』のサウンドについてもお伺いしたいのですが、バンド活動をしていく中で、制作過程にどのような変化が生まれましたか?

井上そもそもの話になってしまうのですが、僕としては、制作する自分とバンドとしてパフォーマンスする自分は使い分けているかも知れません。僕たちはあくまで”会社員バンド”でプロのミュージシャンではないので、お客さまの前で完璧な演奏を披露するよりも“楽しんでいる姿”を届けることが大事なのかな? と思っています。

林その感覚、わかるなー。ライブを重ねていく中でお客さまとコミュニケーションが取れるようになってくる感覚というか……。

山上ライブやコンサートって気持ちが湧き上がったところに音が乗ってくる感覚かもですね。演奏できる喜びをお客さまと共有していく感覚なのかも知れません。

林本当にそうですね。制作過程における変化については、マインド的な部分ですが、生放送やライブなどでお客さまとお話しする機会が増えて、底知れぬパワーをいただいています。またネット上でもSNS等を通じて「このフィールドの曲が好き」とか「あの曲が最高」などありがたい声が届いていて、感謝の気持ちでいっぱいですね。

── 開発当初と比べて、サウンド面で変わった部分、変わらない部分はありますか?

山上開発当初からある「古き良きゲームミュージック」というコンセプトは維持しつつ、メンバーの独自性が輝くようになったと感じています。

── 2026年9月17日(木)に発売されたコンシューマゲーム『アナザーエデン ビギンズ』でもそのコンセプトは引き継がれているのでしょうか?

山上もちろんです。コンシューマ版では、スマートフォン版よりもサウンドをリッチに表現できるので、ゲームの世界により没入していただけるかな と思います。街の音や自然の中で鳴く鳥の声、火山の音……ぜひご自宅の音響システムで楽しんでいただきたいですね。新曲もありますので、どこで新しい曲が流れてくるか、まだゲームをはじめていない方は楽しみにしてください。

井上あとはフルボイスにも注目いただきたいですね。今回、日本語ボイスだけで25,000以上のデータを搭載しました。

── 25,000ボイスですか!?

井上はい! スマートフォン版では音声がなかった部分への追加音声や移動中の足音など効果音にも注目していただきたいです。僕自身、チームにジョインしたのが第二部の制作期以降だったので、山上さんが築いてきた世界観を追体験するようで楽しい時間でした。細部までこだわって作っているので、『アナデン』をプレイしたことがないお客さまはもちろん、スマートフォン版を体験した方にも十二分に楽しんでいただけると思います。

林『アナザーエデン ビギンズ』は単なるスマートフォン版の移植ではありません。『アナデン』ファンの方々にも再構築された新作RPGとして楽しんでもらえるはず。またこれを機に続編への制作へとつなげていきたいですね。

EDEN's CLINEから縁を広げ サウンドから可能性を広げるコンテンツへ

── 続編へとつなげましょう! 『アナデン』ファンの方に向けて、コンシューマ版の楽しみ方を教えていただけますか?

山上1周目は何も考えずにゲームの世界に没入してプレイしていただき、2周目以降でサウンドや制作背景を踏まえて細部に注目していただきながらプレイすると楽しさは倍増すると思います。と、いうのも……サウンドクリエイターが目指しているのは、プレイヤーがBGMや効果音などサウンドを意識することなく、自然と世界観に没頭できるような音づくりなんですよね。

── EDEN's CLINEのみなさんが頑張ったところを知ってもらいたい気持ちですが、「自然と世界観に没頭できる」のを目指しているとは……! ゲーム音楽ってとても奥深い世界なんですね。まずは何も考えずに楽しみたいと思います。最後になりますが、みなさんがこれからやってみたいことを教えてください。

林バンド活動を始めたことで、サウンドクリエイターの活動以外にも、本当に多くのご縁が広がってきたと感じています。これは外部アーティストの方々との交流にとどまらず、社内のメンバー含めひとつの大きなチームになっているような感覚ですね。まだまだEDEN's CLINEは進み続けますよ!

山上『アナデン』は来年で10周年を迎えます。これからも末長く愛されるコンテンツにしていきたいですね。個人的には、地方公演や海外公演と今回の音楽祭で留まることなく可能性を模索していきたいですね。組織としては、ライトフライヤースタジオのサウンドチーム
に関わる人たちを広げていきながら、新しい才能や後継者を育成していきたいと思っています。

井上ライトフライヤースタジオのサウンドチームは『アナデン』だけではないですからね。これからは、もっとサウンドチームの魅力を認知してもらえるような場を作っていきたいと思っています。個人的には、音楽という側面だけでなくボイスや効果音のこだわりも伝えながら「ライトフライヤースタジオのサウンドチームすごいな」と、業界の中でも一目を置かれる存在になれるように頑張っていきたいです。

山上最後になりますが、2026年10月3日(土)発売の2ndアルバム『EDEN's CLINE Arrangement Album Vol.2』リリースに合わせ、東京・六本木「unravel tokyo」にてライブの開催しました。 また、これまでサポートメンバーを務めていたMASA(Guitar)が、「EDEN's CLINE」の正式メンバーとして参画することとなりました。 新体制となる今後の活動に、ぜひご期待ください。

── この度は、コンサート後に貴重なお話をいただきありがとうございました。これからもEDEN's CLINEの活動を楽しみにしています!

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