こだわり抜けたのは、気軽に相談し合える"場"があったから。エンジニアチームが語る『ヘブンバーンズレッド』開発の舞台裏

2022年2月10日にリリースされたAndroid/iOS用シナリオRPG『へブンバーンズレッド』(以下『ヘブバン』)。

アニメ『Angel Beats!』などを手がけたKeyの麻枝 准さんのストーリーはもちろん、グラフィックの美しさやバトルシーンの臨場感などWright Flyer Studios(株式会社WFS)の技術が凝縮されたこの作品は、配信開始から3日で100万ダウンロードを達成。瞬く間に人気ゲームとなり話題を集めました。

今回は作品開発に様々な側面で関わってきた、Wright Flyer Studiosのエンジニア4名(奥村 典史、佐籐 真也、内田 啓太、市川 ひまわり)に、『ヘブバン』の魅力や開発秘話を聞いてみました。

奥村 典史
エンジニア

株式会社フロム・ソフトウェアを経て、2012年に入社。『ららマジ』などの開発に携わる。その後『アナザーエデン 時空を超える猫』に参加し、2018年ごろから『ヘブバン』にメインプログラマーとして参画。スケジュール管理やアドベンチャーパートの実装、その他ゲーム全体のシーケンスなどを担っている。

佐籐 真也
エンジニア

ゲーム開発歴20年以上。株式会社ネバーランドカンパニー、株式会社アトラスでコンシューマゲーム開発を経験。2015年に入社し『アナザーエデン 時空を超える猫』を担当。リリース後に育休を取得し、復帰後『ヘブバン』にて3Dグラフィックス全般とプレイヤーキャラクターの移動操作などフィールド周りの実装を担う。

内田 啓太
エンジニア

2019年に新卒入社。入社後は『消滅都市』シリーズの開発運営に参画し、ドラマRPG『AFTERLOST - 消滅都市』の開発に携わる。その後、本編の開発運営をおこない、2020年からは『ヘブバン』開発に従事。『ヘブバン』ではアウトゲーム(主にUIや育成システムまわり、バトル画面の開発など)で広範囲な活躍を見せている。

市川 ひまわり
エンジニア

2020年に新卒入社。内定者アルバイト時代に『消滅都市』の運営を担当し、入社後は『アナザーエデン 時空を超える猫』に従事。2021年1月から『ヘブバン』開発にジョインし、アドベンチャーパートやUI周りの実装をおこなっている。新卒MVPを獲得するなど、入社直後から存在感を発揮。

作り手の“想い”が詰まった『ヘブバン』の魅力

── みなさんが感じる『ヘブバン』ならではの魅力を教えてください。アニメを観ているかのような演出や、バラエティ豊かな基地内のキャラクターがとても印象的です。

佐藤 真也(以下、佐藤)フィールドを歩く形式のゲームなので、退屈にならないよう、基地内を歩いているだけで楽しくなる仕組み作りを意識していました。

基地内にはたくさんのキャラクターが登場しますよね。散歩していたり、スケボーに乗っていたり、こちらの操作に関係なく会話していたりと。

── たしかに、歩いていると他のキャラクターの話が自然と聞こえてくるような演出もありますね。

佐藤そうなんです。色々な仕掛けをつくるには、プランナーやデザイナーが自由に考えたことを実現する仕組みをたくさんつくる必要があります。

その上で、読み込みで待たせないとか、操作がカクつかないなどの快適性を担保するというのは、プログラム的に非常に骨の折れる作業だったんですが、結果的にここが他のゲームとは違う魅力になったと思います。

内田 啓太(以下、内田)僕はUIデザイナーのこだわりが詰まっているところが魅力だと思います。よくあるゲームだと、シンプルな画面とアニメーションにエフェクトで賑やかすことが多いのですが、『ヘブバン』はUIとゲームが分離しないよう、世界観をキープする「文脈を持った画面遷移」があります。

例えば、主人公がスマホのようなアイテム(電子軍人手帳)を取り出して、画面を操作するところ。画面上にただのスマホ画面を模した長方形を乗せるのではなく、主人公の視界がリアルに表示されるよう、スマホ画面の遠近感を出しているんです。

奥村 典史(以下、奥村)あれは結局3Dにしたんだよね?

内田そうですね。1カ月くらいかけて、けっこう苦戦しながら自然に見える3Dを(笑)。没入感にこだわりつつ、操作の快適さも同時に追求するという、こういった丁寧さが散りばめられているのがこの作品の特長だと思います。

市川 ひまわり(以下、市川)『ヘブバン』はKeyの​​麻枝 准さんによるシナリオが大きなポイントでもあるので、その表現を保つためのゲームデザイナーやスクリプターのこだわりも各所に詰まっていますよね。周りの人たちのこだわりに引っ張られて、私のやる気もぐんと上がったような気がします。

私が最初に担当したのは、ストーリーの中で茅森 月歌(主人公)の発言を6つの選択肢から選ぶ部分です。

弊社のゲームデザイナーや、ときには麻枝さんからも「タップだけじゃなくドラッグ&ドロップもできるようにしてほしい」「選択ボタンを押したときに、茅森の声がちゃんと出るようにしてほしい」と色々な要望がありました。他にもBGMも変えて彼女の心の声のような演出にしたりと、こだわりが細部にまで宿っています。

ゲームの面白さと操作性を追求する日々

── 『ヘブバン』を開発していて印象的だったエピソード、苦労した点を教えてください。

奥村アドベンチャーパートの演出を担当しているディレクターと、わずかな動きを何度も確認して微調整したところですね。例えばキャラクターがフィールドを歩くときは、基本的に左右に動くようになっていますが「背景も同じように移動しないとおかしい」との指摘をもらいました。その違和感が最初は分からず「どういうこと?」と(笑)。

理解できてからは、キャラクターが自然に動いて見えるかどうかを何度もディレクターに確認してもらいました。

正直、こういったディレクターの演出は自分にない視点ばかりなので、すごく勉強になります。ただ、対応するにはあまりに細かな作業が多すぎる(笑)。

やがてメンバーが増えて量産していくことを考え、細かな指定をしなくてもスクリプターが対応できるように、まだチーム規模が小さい段階から「汎用的なプログラムに落とし込む作業」を検討していました。その結果、こだわりと量産しやすさの両方を担保する仕組みを実現できたんじゃないかと思います。

佐藤自分は、アーティストやプランナーとお互いの知識や技術を共有できたところが印象深いです。自分はゲーム開発歴的にベテランではあるんですが、『ヘブバン』の開発は特に、技術レベルをお互いに高め合えた、学びの多いプロジェクトだったと思います。

例えば、今回組んだアーティストは、もともとコンシューマー系のゲームに携わっていた方が多かったんですね。スマホゲームは、コンシューマーのゲームに比べてグラフィックにあまりこだわらないケースもありますが、今回は彼らの経験とこだわりのおかげで、グラフィックのクオリティを格段に上げることができました。

── 今回「グラフィックがすごい」と言われているのはそういった経緯が関係しているんですね。

佐藤そうですね。コンシューマーゲームの経験が豊富な方からアニメーションの実装方法を教えてもらったり、シェーダーのテクニックを教えてもらったりなど、刺激の多い現場でした。

例えばシェーダーであれば、キャラクターの目が髪の毛より前面に出ているなどのアニメ的な表現のやり方は、アーティスト主導で作ったものを自分が最適化していくという方法で作っていきました。

一方で自分からも、背景のFog(高さや奥行きに対して色を乗せていく表現)を『ヘブバン』独自の形にカスタマイズしてアーティストに渡し、それを使って理想的な空気感を表現してもらうなど、職種を越えてより良い方法を模索して作れたと実感しています。

内田僕が業務上でよく関わる相手はUIアーティストだったんですが、その方の想いを形にしつつ、実装しながら改善する作業が記憶に残っています。最初のころは特に『ヘブバン』のブランドアイデンティティである「最上の、切なさを。」を彩るUIにするため、すり合わせを細かくおこないました。

「作ってみたんですけどどうですか?」と聞いて、「線がかぶっていてダサい」「色の乗せ方がちょっと違う」といったフィードバックをもらいながら、逐一コミュニケーションをとっていました。みなさんUIにすごくこだわりがあるので、それにこたえる努力をして、最終的に納得してもらえたのは嬉しかったですね。

やりとりの中では、実際に触ってみたり置いてみたりして、体験として触り心地が良いものを考え直すこともありました。全部作りきって「やっぱりいらない」となったものもあります。でも、作って微妙だったら「微妙だね」とみんなで言い合える環境はとても良いと思うんです。

── 素直に意見を言い合える環境なんですね。

内田はい。もちろん相手へのリスペクトを持つことは前提ですが、「せっかくつくったから」とリリース版に乗せてしまうのではなく、「美しい」「面白い」「使い心地が良い」といった基準で考えられるのがこのチームならではだと思います。

市川エンジニアとしてではないですが、新卒入社半年ぐらいでこのチームにジョインしたとき、風通しの良さには驚きました。「入社したての私の意見もちゃんと反映されるんだ」と衝撃を受けましたね。

あと、奥村さんが「雑談部屋」というZoomの部屋を業務時間中ずっと立てていて「いつでも入っていいよ」と言ってくれていたので、分からないことがあったらすぐに質問できます。グラフィック周りが分からなかったら佐藤さんを「ちょっと来てもらってもいいですか」と呼んだり、UI関係は内田さんに聞いたりと、コロナ禍のリモートワーク環境であっても先輩に気軽に相談できていました。

話しかけたいときにマイクだけONにすれば話せるので、いちいちチャットの文章を考える手間がないんですよ。あ、カメラは奥村さんだけいつもONにしていますね。

奥村うん。カメラをONにしていると、退席していても「メインプログラマーがきちんとチームを見ている」という存在感があるかなと思ってやっています。

お互いが気持ち良く働けるよう、配慮は欠かさない

── 同じチームの人や、他職種の人と一緒に仕事をする際にどんなことを意識していますか?

奥村もともと人と話すのが好きなので、自分の場合はメンバーと雑談をしながら仕事を進めることが多いですね。さっき市川さんが言っていたZoomの「雑談部屋」もそういう役割があると思います。

エンジニアって、プログラムを組んでいるときは睨んでいるように見えますし、口を開いたかと思えば「ここはどういう仕様にするんだ」と、問い詰めているように受け取られるのではないかと思うので(笑)。雑談は大事だなぁと。

あとは一緒に働いている人にそもそも興味があるんですよ。みんなと話すと、その人について新たな発見があって楽しいですし、会話を重ねれば相手とのコミュニケーションにも慣れますよね。そういう環境だとディスカッションも進むし、良いアイディアも出てきやすいと思うんです。

佐藤自分はアーティストやプランナーに無駄な作業をさせない、作業を止めないことを意識しています。ツールや機能が動かないという状況を極力避けていますね。

とはいえ、このチームは若い方々のサポート力が非常に高いので、自分はちょっと遠くから見守りながら、ここは自分がやらなければというタイミングで出ていく感じですが(笑)。

内田僕は、チームの風通しの良さを維持することを意識しています。

実装に関してそもそも分からない、何から始めたらいいのか分からない人もいます。さらにUnityでの大規模開発は抑えておかなければならないワークフローが多く、Wright Flyer Studios独自のライブラリやツールもあるので、それらを定期的に拾って資料化することは習慣になっていますね。

みんなで集まって「こう扱うと便利だね」とノウハウを共有できる機会も作っているため、周囲の人と話しやすく、相談しやすい空気が生まれれば良いなぁと。

他の職種からは、僕たちがどんな仕事をしているのか分かりにくいと思うんですよ。中が見えないことで不安を抱く人もいるので、「こういう仕組みを作っているから大丈夫だよ」と実装の内容を簡潔に書いて説明する場合もあります。

── 入社したての方や他職種の方にとってありがたい存在ですね。安心して仕事ができそうです。

内田情報をまとめるのはあまり得意ではないですが、チームで働く上でも、できる限りやりたいと思っています。

奥村こういう行動が自然にできるのってすごいことだなといつも思います。内田さんのようにサービス精神旺盛なエンジニアが多いので、すごく助かります。

市川私は社内の皆さんと仲良くなりたいと思っているので、「困っている人は絶対に助ける」というマインドを持つようにしています! 

社内のチャットに「ITサポート」という質問を投げ込めるチャンネルがあるんですが、そこに「Unityが動かないです」などの困りごとを見つけたら、「誰よりも早く反応するぞ」という気持ちで監視しています(笑)。

これからの『ヘブバン』

── 今後の『ヘブバン』に期待すること、楽しみにしていることを教えてください。

奥村シナリオの続きがとにかく気になります!いちプレイヤーとしても、今後のストーリー展開が楽しみです。つくっている側なのでネタバレもあるんですが、つくりきったものを新鮮な気持ちでプレイしていると改めて感動するんですよね。

佐藤多くの方にプレイしていただいたんですが、まだまだやれることはあると思っています。自分が知らない知識や技術を持っている方と一緒に開発できたら良いですね。人が増えればお互いの時間やスキルも補えるので、ぜひ色々な経歴を持った方に来てほしいです。

内田『ヘブバン』は自由度の高い環境で作られているので、これからなんでも生み出せる環境だと思います。

一人の開発担当としても「みんながワクワクするものを、これからどれだけ作れるんだろう」と毎日楽しみにしています。ゲームを面白くするための無茶振りや、ぶっ飛んだ企画を持ってくる方にたくさんジョインいただけたら嬉しいです。

市川今後どんどんチームも大きくなり、色々な方と話すことが増えると思います。私は人と関わることが好きなので、これから一緒に働く方たちと出会えるのが何より楽しみです。

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