過去の積み重ねのおかげで、『転生したらスライムだった件 魔王と竜の建国譚(まおりゅう)』が誕生。Wright Flyer Studiosの3D技術、組織づくりの変遷を追う

『消滅都市』や『アナザーエデン 時空を超える猫』(以下、『アナデン』)をはじめとする2DゲームからスタートしたWright Flyer Studios。

しかし最近は、『転生したらスライムだった件 魔王と竜の建国譚(まおりゅう)(配信:株式会社バンダイナムコエンターテインメント)』(以下、『まおりゅう』)や『へブンバーンズレッド』(以下、『ヘブバン』)など、3Dゲームでも多くの方に注目していただけるようになりました。

2Dゲーム主体のスタジオが、ハイクオリティな3Dゲームをつくれるようになるまでにどのようなストーリーがあったのか。今回は、Wright Flyer Studiosの3Dチームを率いる主要メンバー3名にインタビュー。Wright Flyer Studiosとして3D表現に踏み込んだ経緯や、技術向上の変遷を詳しく話してもらいました。

岩本 大祐
Studio本部 / Studio 1部 副部長

『月刊少年ジャンプ』『ヤングアニマル』等で漫画、イラスト等の連載を担当したのち、コンソールゲーム会社にて、モデリング、アニメーション、キャラクターデザイン、アートディレクターを経験し2013年にグリーに入社。新プロダクトの開発をメインに携わり、『アナザーエデン 時空を超える猫』『へブンバーンズレッド』ではアート組織の組成、技術指針の策定、マネジメント、進行管理に従事。

庄田 陽一
Studio本部 / Studio 2部 副部長

Web制作会社やPCモバイルサイトのディレクション、フリーランス、そして数社ほどを経たのち、2014年にグリーへ入社。その後Wright Flyer StudiosのStudio本部 Studio2部の副部長として、アート組織の組成、マネジメント業務に従事。『転生したらスライムだった件 魔王と竜の建国譚(まおりゅう)(配信:株式会社バンダイナムコエンターテインメント)』では組織づくりから参画し、デザイン組織全体を牽引。現在もプロジェクトの組織編成を担い、後方支援の要として活躍。

山本 祐
Studio本部 / Studio 2部 / Art3グループ シニアマネージャー

複数企業でコンシューマー、スマホゲームの開発に携わり、プロデューサー、ADを経験し2017年にWright Flyer Studiosへ入社。ゲーム業界約20年の経験を生かし、『転生したらスライムだった件 魔王と竜の建国譚(まおりゅう)(配信:株式会社バンダイナムコエンターテインメント)』ではキャラ関連の初期設計を担当し、組織体制や予算決定にも参画。現在は3Dゲームに関連するマネジメント等を担当する。

2D・3D、両方の技術者が切り開いた3Dゲームへの道

── Wright Flyer Studiosでは過去にもいくつかの3Dタイトルを開発してきたかと思いますが、『武器よさらば』などの過去作品と比較した際に、『まおりゅう』で注力した点について教えてください。

山本 祐(以下、山本)過去の3D作品はデフォルメ表現だったのでキャラクターも頭身を低めに設計していたのですが、『まおりゅう』ではアニメ『転生したらスライムだった件』(以下、『転スラ』)の実頭身を再現しています。また、アニメにあわせたセルルックの表現にもこだわっています。
頭身が高いと、デフォルメに比べモデルやアニメーション共に難易度が上がるのですが、『転スラ』のファンの方たちが期待する方向性も考慮し、バンダイナムコエンターテインメントさんと協議して方向性を決定しました。

岩本 大祐(以下、岩本)今までテクスチャのみで表現していたものを、シェーディングまで含めて表現しているのは、『まおりゅう』が初の試みでしたね。表情の切り替えが表現できるように、フェイシャルもシェイプで制作しました。
リッチな3Dエフェクトも含め、表現をアニメのクオリティに近付けられたのは、Wright Flyer Studiosにとって大きな進歩だったと思います。

── Wright Flyer Studiosではどのように3D制作体制を整えていったのでしょう?

岩本3Dタイトルを本格的に作りはじめた頃は、技術や人の蓄積が課題でした。3Dのプロジェクトがなかなか進まない日々が続いていたため、3Dアーティストを大量に採用することは難しかったんですよね。
とはいえ、これからのゲーム業界で3Dは避けて通れない道です。社内でも「つくりましょう」「チャレンジしましょう」という意識が強まり、その1本目として生まれたのが『武器よさらば』でした。
当時は3Dゲームの制作経験者がほぼいなかったので、社内にいた2Dアーティストが3D技術を切り開き、なんとかリリースに至りました。

山本その後、別作品の制作がおこなわれている最中に、3Dの管理兼作業者として自分が入社しました。
その作品では、協力会社さんにデータをつくっていただき、ゲームに組み込む作業を内部でおこなっていました。しかし、進めるなかで色々な不都合が出てきたために、社内に3Dアーティストを増やす必要性が生まれ、自分が採用されたと記憶しています。
はじめはキャラモデラーとして参画したのですが、制作したデータが実機に乗らないという問題が発生したりして、その対応に多くの時間を費やしたのを覚えています。

庄田 陽一(以下、庄田)こうした技術的な問題は、人や知識を蓄積して改善していくしかないなと考えていました。当時は3Dアーティストをどうやって採用していくかについて、岩本さんとよく話していましたね。

岩本そうでしたね。『武器よさらば』がリリースできたことや、その後のタイトル制作での学びによって、3Dゲームを制作するための組織編成に本腰を入れる動きが生まれました。
山本さんの入社前後で3Dアニメーターをはじめとする経験者が参入し、社内の2Dの方々が繋いでくれたクオリティを上げながら、課題をクリアする流れができました。本当に一つひとつの積み重ねです。

── 組織や技術の改善を精力的におこなっていたんですね。その結果、『まおりゅう』ではどのように制作が進められたのでしょうか?

庄田Wright Flyer Studiosとしては初めて、初期段階から3Dタイトルの経験者が多いなかでスタートできました。さっき岩本さんが言っていた“積み重ね”の話と関連しますが、Wright Flyer Studiosの掲げるVALUEのひとつ、「RETRY」(挑戦する、何度でも。)の結果だと思います。
また、3Dのジャンルでは人材と知識の蓄積が課題ではありましたが、TA(テクニカルアート)チームはスタジオの初期段階から技術継承を続けてきてくれていました。TAチームのおかげで技術の蓄積や効率化が担保されてきたところも大いにあります。

山本そうですね。『まおりゅう』では、そんなTAチームにルックの方針やツールの選定をする初期段階から関わってもらいました。今までだと、ある程度ゲームがかたちになってきたころに合流する流れだったんです。
TAチームが制作初期から設計に携わってくれたおかげで、開発のパイプラインも不備なく整備できましたし、業務をショートカットできるような環境も整い、生産効率も上がったと思います。
また、アートディレクター(以下、AD)と初期段階から深く連携できたことも大きいです。ルックのすり合わせについては、AD主導の元、共通の指針を持ってスタートできました。
ADがバランスを取ってくれたおかげで、異なるセクションのデータも一貫性を持って調整を進められました。キャラの見栄えを優先しつつ、背景のクオリティも担保できたのはその一例です。
タイトル的に、クセの少ない表現をしているIPだったこともあり、難しいことはせずプレーンな技術を採用しています。ただ、プレーンな部分を細かくチェックして詰めていく。ここはADが大いに活躍してこだわってくれました。

改善は早急に。次のプロダクトまで待たない

── 技術力を高めていくために行っていたことを教えてください。

山本先ほどのADのこだわりの部分と関連しますが、開発途中でも、より良い仕様のために常に話し合いを実施していました。そのたびにプロダクトの見直しができるので、クオリティを上げられたと思います。
おそらく世の中には、問題点をクリアしたらそのまま進み、途中で見つかった改善点は「次のタイトルに活かそう」となるものも多いと思います。でも「その改善を次のタイトルまで待つ必要はない」というADの考えのもと、みんなが動いてくれました。クオリティ重視のために、変化を恐れないチームだったなと。

── 他にも継続的に取り組んでいることはありますか?

山本『まおりゅう』デザイナー全体の隔週の定例で、お互いの仕事内容を報告し合っています。「こんな表現ができるようになりました」などと教えてくださる人がいるので、こちらも学びになりますね。
職種ごとの進捗定例は週に1回実施していて、そこでも技術共有をしています。各々のつくり方は少しずつ異なるので、自身の制作のヒントになったり、コストカットに活用できたりします。
メンバーが増えてきたこともあり、情報発信に積極的な方を中心に、こういった会をセッティングできるようになってきました。

庄田Zoomを使うようになってからは勉強会も開きやすくなりましたよね。今までは会議室を押さえるといった物理的な障壁がありましたが、Zoomならチーム単位の勉強会も、Wright Flyer Studios全体のアート職の勉強会もすぐに開催できる。勉強会の輪が広がりはじめて、実施回数も増えてきた印象です。

岩本勉強会をコンスタントに続けるために、山本さんが頑張ってくれていますよね。Slackでもそういったチャンネルが立ち上がりましたし。

山本Slackで資料やイベントを共有する際、反応が無いと「せっかく発信したのに」と次の投稿がしづらいと思うんですよね。なので、まずは自分から反応するようにして、他のみんなも会話に加わってくれたらいいなと期待しています。一人乗れば、みんな乗ってくるだろうと。
Wright Flyer Studiosに3Dタイトルが増えてきたことで、お互いの仕事を知りたいという需要は確実に高まっています。例えば『まおりゅう』のスタッフは、『ヘブバン』のことを聞きたいし、その逆も然り。そうしたメンバーのニーズを汲み取って、「じゃあ発表会しちゃいましょう」と気軽に発信できるような場づくりを心がけています。

技術より、ストーリーで感動を伝えたい

── Wright Flyer Studiosで蓄積されてきた3D技術を、今後どのように進化させていきたいですか? また、技術を高めた先の展望も教えてください。

山本『まおりゅう』や『ヘブバン』も、みなさんに喜んでいただけるものになったかなとは思いますが、まだまだ改善点もあります。クオリティの全体的な底上げをしたいですね。
その上で、Wright Flyer Studiosには素晴らしいスキルを持った2Dアートのデザイナーがとても多いので、その方々のノウハウを3Dに落とし込んで届けたいです。最終的には、他社のベンチマークになるような会社になりたいですね。

庄田方向性についてよく社内で話しているのは、フォトリアル系を追求しないことです。今のコンシューマーゲームの主力タイトルはリアルさを極めて、どんどん映画のような映像に近付いていますよね。
というなかで、Wright Flyer Studiosはあえて同じ方向に進まなくて良いのではないかと。『ヘブバン』をはじめとする、作家性の強い作品がWright Flyer Studiosの魅力のひとつだと思うので、その部分を活かした“一癖も二癖もある”絵づくりをしていくことで、独自路線をつくっていきたいです。

岩本自分も山本さんや庄田さんと同じ意見です。他社の3Dタイトルのクオリティにやっと並んだぐらいかなと思うので、ここから先は、「Wright Flyer Studiosはここまでつくれるのか」というレベルを目指したい。そしてそこをさらに超えて、3Dの技術を意識されないぐらい自然な表現で、作品のメッセージを伝えたいです。
フォトリアルを追求しないことに関連しますが、「3Dがすごい」と思われると、それは本来伝えたいこととは違う気がしていて。裏側の技術は高度だけど、ちゃんと作品そのものの魅力で感情を揺さぶることをこれからも大事にしていきたいです。

── ゲームをつくる場としてWright Flyer Studiosを検討されている方へのメッセージをお願いします。また、Wright Flyer Studiosにマッチする人物像についても教えてください。

岩本自分のスキルをプロダクトにどう活用し、活躍していくかというビジョンがある方には、Wright Flyer Studiosとしても協力できると思います。ご自身の目標も達成できるし、お互い幸せになれるのではないでしょうか。
Wright Flyer Studiosは個人の意見を尊重する環境なので、もし一緒に働くことがあれば、そういった方の話は聞きたいですね。そしてご自身の能力を発揮し、プロダクトを良くしていただきたいです。

庄田『まおりゅう』と『ヘブバン』は、ありがたいことに大盛り上がりしています。でも、次につくる3Dゲームでも評価していただけるかどうかはわかりません。他にもっとすごい作品が世に出たり、3Dゲームとして求められるものが変わったりするかもしれない。
それで万が一「失敗」と言われるものがあったとしても、内省して、周囲へのリスペクトを忘れず、再挑戦できる人はWright Flyer Studiosにマッチすると思います。現状に嘆かず、前向きに立ち向かってくださる方、いわゆるVALUEを体現できる方ですね。

山本Wright Flyer Studiosは、ジェネラリスト・スペシャリストの双方に活躍の場があるところだと思います。
どちらか一方しか目立たないような、それこそマネージャーになることでようやく評価される会社もあるかもしれませんが、Wright Flyer Studiosはどのポジションでも活躍の道筋がある。そのキャリアパスを一緒に模索してくれるので、納得いただける環境を提供できるとお約束します。
あと、コミュニケーションを大事にするカルチャーも魅力だと考えます。
自分がWright Flyer Studiosに転職してきたとき、積極的なコミュニケーションにとても助けられました。入社してすぐに開発途中のものを見せてもらい「せっかくだから、まっさらな眼で見た意見がほしい」とも言ってもらって。新しい人間を受け入れる空気がすごく強いなと驚いたくらいです。
自分のチームとしては、アートディレクションを得意とする方が来てくださると嬉しいです。そして、アート職だけではゲームを届けることができませんので、作品を技術で支えるエンジニアなど、興味を持たれた方とぜひお会いしたいです。

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