あらゆるチームと連携するイベントディレクター。自分自身が納得する「面白い」の追求が推進力を生む
「最上の、切なさを。」をテーマに、キャラクターの感情表現にこだわる『ヘブンバーンズレッド』(以下、『ヘブバン』)の制作チーム。Keyとライトフライヤースタジオの協業プロジェクトとして、原案・メインシナリオの麻枝 准さんや、キャラクターデザインのゆーげんさんをはじめ、たくさんのプロフェッショナルが感動体験の創出に向け力を合わせていますが、その中で、イベントディレクターも重要な役割の一つです。
新規イベントの立ち上げに合わせて、ストーリー、アート、演出、サウンドなどクリエイティブ面の総合ディレクションを手がけるイベントディレクター。社内の関連部署と連携しながら実装までの制作進行管理も務めます。
幅広い分野にまたがるイベントディレクションの具体的な業務内容とは。今回は『ヘブバン』のイベントディレクターにインタビュー。現場のリアルについて話してもらいました。
2017年株式会社コロプラへエンジニアとして入社。1年目にプランナーへと転向し、新規タイトルの立ち上げや長期タイトルの運用に携わる。2022年3月よりWFSへ入社。『ヘブバン』のイベントディレクションを務め、同年7月よりマネージャーに昇格。
あらゆるチームと連携し、構想から実装まで責任をもつイベントディレクター
── イベントディレクターの業務内容を教えてください。
石井新規イベントの構想段階から携わり、リリースまでに必要な工程の設計から進行管理、クオリティのチェックまでを担当します。
── 非常に幅広いですね!具体的な業務内容も教えてください。
石井イベントの規模や種類によって変わりますが、最初はシナリオについての議論から入ることが多いです。『ヘブバン』の場合は、まず、Keyさんと協力してイベントのテーマを決めます。その後、Keyさんからシナリオアイディアをいただき、その内容をベースに議論を重ねます。内容確定後は、ゲームへの落とし込みに入り、場合によってはもう一度Keyさん側に「ここを調整してほしい」「ここをもっと魅力的に見せたい」と依頼をすることもあります。
ある程度ゲームへの落とし込みが完了すると、今度は社内のあらゆるチームと連携し、ゲームへの実装に向けた動きがスタートします。リリースするイベントの種類にもよりますが、関わらないチームはほとんどありません。
例えば、アート分野だと2Dチームにはキャラクターの表情、3Dチームには背景やモーション、シネマティクスチームにはシネマティックシーンやライブシーンなどをそれぞれ依頼をします。もちろん依頼して終わりではなく、進捗管理やクオリティチェック、必要があれば修正依頼も含めて業務範囲です。他にも、エンジニア、サウンド、演出、バトル、運営とあらゆるチームと連携し、ほぼ毎日やり取りをしています。
── どれくらいのスケジュールで1本のイベントを完成させるのでしょうか?
石井ストーリーやキャラクターが確定して、社内への連携が進められるようになってからは4〜5ヶ月ほどです。イベント全体の構想からだともっと時間はかかり、遅くても半年前からは準備をはじめます。
── 業務を進めるうえで、気をつけていることはありますか?
石井「自分が納得のいくものがつくれているか」は気にしています。
イベントディレクターはたくさんのチームと関わる仕事です。各チームの間で板挟みになり、思い通りにいかない瞬間も必ず出てきます。それでも、妥協や迎合でその場をしのぐのではなく、自分が本当に面白いものを追求し続けなくてはいけません。そうでなければ、世界中の人へ新しい驚きを届けることなんてできません。自分が納得していないと各チームから上がってくる制作物に対して、良し悪しを判断することも難しくなります。
遊んでくれた人の声が、一番のやりがい
── 仕事のやりがいを感じるのはどんな瞬間ですか?
石井遊んでくれた人の「面白かった」「泣いた」「感動した」といったつぶやきをSNSで見つけたときです。イベントディレクターはイベントをリリースするのに必要な、すべての工程に携わります。0から100まですべてを知っているからこそ、得られる達成感は大きいのかなと思います。
── やはり、遊んでくれる人の声なのですね。石井さんが具体的に覚えている瞬間はありますか?
石井直近だと、1.5周年イベントとして「きみはこの夏のFairy、ぼくはその姿を瞳の奥にRec.」をリリースしたときのことは覚えています。途中から引き継いだプロジェクトでしたが、予定通りリリースできてほっとしました。リリース後、たくさんの人が感想をSNSでアップしてくれているのを見て、自分の頑張りが報われた気がして嬉しかったですね。
信頼関係を構築しやすかった環境
── 石井さんは、転職して1年4ヶ月でマネージャーになっています。入社してすぐに活躍できたのはなぜなのでしょうか?
石井正直自分では分からないですね(笑)。
心がけたのは、前マネージャーと密に相談をしながら方向性がズレないようにすることと、レスポンスを早くすることです。
とくに私の場合、自分の強みは「人を巻き込む力」だと思っていて、連携するチームメンバーとの信頼関係構築には気をつけていました。積極的にコミュニケーションを取り、社歴に関係なく「石井さんが言うならもう少し考えてみようかな」と思ってもらえる関係性をつくれたことが、うまくいった要因だったのかなと思います。
── なるほど。転職してすぐ各メンバーとの面識もないなか、どうやってスピーディーに信頼関係を構築したのでしょうか?
石井特別なことはなにもしていません。もとから『ヘブバン』を手がけるチーム同士のコミュニケーションが非常に活発だったことに、助けられたのだと思います。
コロナをきっかけにオンライン業務の割合は増えましたが、対面の機会が減ったぶんチャットでの意見交換はバンバンおこなわれていて、自分からなにかを聞きにくい雰囲気はありませんでした。業務に直接関係ない雑談のような話でも、専用のZoomが用意されていて気軽に話せました。どれだけ忙しい人でも「5分だけお時間良いですか?」と声をかければ、答えてもらえたので行き詰まることはなかったですね。
自分の基準を持ち続けるタフさが必要な仕事
── イベントディレクションの仕事に必要なスキルを教えてください。
石井スキルというよりは性質に近いかもしれませんが、あらゆるステークホルダーの意見を聞きつつも、最後は自分自身で決断をする精神的なタフさが必須だと思います。
イベントディレクターはどうしてもパイプ役として、様々なステークホルダーの間で板挟みになりやすいポジションです。そうなっても、自分の納得のゆく面白さを追求し続け、責任を待って決断をし続けることが求められ、ある種の精神的なタフネスが求められます。
そのうえで、持っているとさらに活躍がしやすくなるスキルはいくつかあります。例えば、シナリオを読み込む力です。『ヘブバン』にとってはシナリオがとても重要なので、既存のストーリーを完璧に理解しておくことが必要ですし、Keyさんからいただいたストーリーについて、よりよくするための提案ができる能力は非常に重要です。
デザインの良し悪しを判断できるスキルもあると役立ちます。デザイナーほど知見を持っている必要はありませんが、最終的に良いものをジャッジできるだけの感性を持っているとスムーズです。
── 新しくイベントディレクションチームに配属された人は、最初にどんな業務からはじめるのでしょうか。
石井入社してすぐに一人で実務を任せることはしないので安心してください。
まずは既存メンバーのサポートについてもらって、仕事の全体感をつかんでもらい、ノウハウ吸収をしてもらうつもりです。イベントディレクターの仕事は多岐にわたるため、実際の仕事ぶりを見て学び、実際にディレクションするときのイメージをつくってもらう方が早く成長できると思ってます。イベントディレクションチームのメンバーは話を聞いてくれる人ばかりなので、つまづいたり困ったりすれば、会話を通じてすぐに解決できる環境だと思っています。
── 最後に、どんな人と働きたいのか教えてください。
石井熱量が高く「良いものをつくりたいんだ」と思っている人ですかね。
熱量が高いために、チームメンバーや他チームの人と意見がぶつかることもあると思います。そんな衝突はあって当たり前で、逆に誰とも議論しないまま進むときこそ「誰かの言いなりになっていないかな」と心配になります。もちろん、相手の意見を聞いて心から納得した場合はムリに最初のアイディアを押し通す必要はありません。ときに柔軟に意見を変えながら、自分の感性を見失うことなく進める人と一緒に働ければと思います。