妥協ないCEDECへの登壇準備で見えた、ライトフライヤースタジオのスキル向上への姿勢

国内最大のゲーム開発者向けの技術交流イベント「CEDEC」(コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス)。

2022年は8月23日(火)~25日(木)にオンライン開催され、ライトフライヤースタジオでは『ヘブンバーンズレッド』の事例を中心に、過去最多の14セッションが採択されました。

今回は、登壇した技術室の西田綾佑さんから、CEDECに対する社内の取り組みを通じて、ライトフライヤースタジオのスキル向上への姿勢について話してもらいました。

西田 綾佑
開発本部 技術室 副室長

2014年の新卒入社。『ヘブンバーンズレッド』『アナザーエデン 時空を超える猫』など複数タイトル開発にクライアントサイドから携わり、テクニカルディレクターとして技術選定の側面から、複数プロジェクトに横断的に参画。カンファレンス登壇も多数。

周囲を巻き込みながら、登壇者をサポートする要へ

── ライトフライヤースタジオとしてCEDECに登壇するようになったきっかけを教えてください。また、西田さんが登壇した経緯も知りたいです。

西田 綾佑(以下、西田)自分は2014年に入社し、初めてCEDECに聴講者として参加したのですが、他社の発表を見てなんだか悔しい気持ちになり「もっとがんばろう」と刺激されました。自分の知識の少なさを痛感させられたといいますか。
『消滅都市』がリリースされた後、生みの親である下田翔大さんがCEDECに登壇していました。記事化もされ、サービスや会社が注目されはじめた様子を見て「かっこいいな」と素直に思ったんです。
その後、2017年に自分が担当した『アナデン』をリリースした際、できあがった技術をCEDECで共有したいと考え応募し、初登壇しました。
登壇後は周りから声をかけていただいたことで、評価を肌で感じられ「楽しかったな」と。その気持ちのまま、登壇者のサポートをスタートしました。それ以降、毎年社内から必ず登壇者が出るようになりましたね。

── このサポートは自発的に西田さんが実施されているんですか?

西田そうですね。CEDECは、年始から3月末の公募期間にエントリーして、審査後に採択されたら登壇できる流れになっています。そこで当社では毎年、CEDECの公募が始まったタイミングで社内への告知をしているんです。
一方、ただ告知をするだけでは挑戦しにくいメンバーもいると思うので、社内コミュニケーションツールであるSlackに「CEDEC応募サポートチャンネル」みたいなものをつくって、登壇に興味がある人に入ってもらうようにしています。
そこでは発表したい内容を簡単に書いてもらい、チャンネルに入っているみんなでコメントをしながらテーマを検討していき、ドラフト作成に移ります。
とはいえ、ドラフトづくりや発表自体が初めての方も多いので、何から手を付けるべきか分からないメンバーも多い。そこで、過去に登壇したメンバーの資料を共有し、参考にしてもらっています。
提出されたドラフトはみんなで目を通して様々な職種の方の目線からコメントを書き込んで良いものにしてゆく、そんな場づくりをしています。

── どのように多くの方が関わっているのでしょうか?

西田CEDECの登壇経験者や、セッションに関連する職種の人たちにもドラフトをレビューしてもらうんです。例えばアーティストのセッションであれば、他のチームでアーティストをしているマネージャーなどですね。
過去に登壇経験がある方は、どのような内容であれば聴講者が理解しやすいかを、職種にかかわらずフィードバックしてくれます。
年々CEDECの登壇経験者は増えていますから、このバックアップ体制は強固になっていると自負しています。

── 採択後はどのような準備がおこなわれているのでしょうか?西田さんをはじめとする社内のフォロー内容についても教えてください。

西田発表の約2カ月前からスライドの準備に取り掛かります。聴講者にわかってもらいやすいスライドの構成の仕方に加え、言葉につまるようであればゆっくりはっきり喋るようアドバイスをしたり、カンペの用意を促したり、当日スムーズに発表するための細かな提案もしています。
3週間前ぐらいには、社内での発表練習を実施。ストップウォッチで時間をはかり、本番さながらのプレゼンを社内メンバーが視聴。視聴者にはアンケートでフィードバックを送ってもらうので、それをもとに発表内容をブラッシュアップして本番に挑みます。ときには「もう一回練習させてください」と、再挑戦する方までいます。

── ここまでしっかり準備していたことに驚きました。

西田同業者の方々に見てもらう貴重な機会ですから、一つひとつが濃い発表になるよう、そしてこのセッションで何かを持って帰れるようなクオリティを意識しています。
また登壇者にとっては、ライトフライヤースタジオでの仕事により誇りを持てるような成功体験になればと考えています。

伝えたい熱意、学びの姿勢、どちらも尊重する

── CEDECに登壇したり、発表する方のフォローをしたりする西田さんの原動力は何なのでしょうか?

西田CEDECに登壇して楽しかったこと、他社の方から「昨年のセッション見ました」など反響をいただけることが自分を突き動かしていると思います。業界的に自分のバリューが上がってくる感覚も面白くて、自然と毎年登壇を意識するようになりました。
また、このような機会に興味がある人にはぜひ、自分が感じたような手応えを味わって幸せになってほしい。CEDECの登壇をひとつの成功体験にしてもらいたいので、こういった組織的なサポートができるような場づくりを続けています。

── CEDECをはじめとする情報発信の場に対する、ライトフライヤースタジオの姿勢も教えてください。

西田ゲーム業界全体を盛り上げたい気持ちから、よい取り組みや技術があれば惜しみなく開示していく意識があると思います。
どうしても自社のノウハウを共有することに抵抗がある場合もあるかもしれませんが、ライトフライヤースタジオはノウハウも苦労話もオープンです。参加した方々には、まだ歴史が浅いライトフライヤースタジオについて少しでも知ってもらいたい想いもあり、お伝えできることは積極的に発信しています。
会社としての社員への取り組みとしては、CEDEC前にはマネージャーや上司へ、準備に集中しやすい環境をつくるために業務調整をお願いしています。
自主的にみなさんが登壇することを決め、自分もその意識でやっているとはいえ、ただ働く時間を増やして無理をするのは良くない。このような機会の大切さを全員が理解しているので、業務配分をしながら進行できています。とはいえ、登壇前はみんなバタバタですけどね(笑)。

── CEDECのセッションを見る側のみなさんには、どのような後押しがありますか?

西田たとえば新卒社員の場合、CEDECを知らない人も多いので、まずは見てきてもらう。これがすごく大事だと思います。
自分も入社後すぐに行かせてもらい、いろんな感情を味わったので、他の会社のことを知ったり、自分の知識不足を実感したりと、何かしら学びがあるんですね。
当日はSlackに、CEDECの雑談チャンネルのようなものを立ち上げて「このセッションが良かった」「こういう技術が話されていたから後で見てみてください」「発表内容の概要まとめました」など、頻繁に情報共有しています。
チャンネルの書き込みのおかげで、お祭り気分を味わいながら「ライトフライヤースタジオも、もっとがんばろう」とみんなの気合も入りますね。

技術力を認めてもらえたことが原動力

── CEDEC登壇後、西田さんのなかで変化はありました?

西田変化があったと思います。
初めて登壇した2017年には「アナザーエデンにおける非同期オートセーブを用いた通信待ちストレスのないゲーム体験の実現」という題目で、オートセーブ機能の技術的な話をしました。
この技術によって、スマホでコンソールゲームに近い遊び方ができたことが、当時は新しい体験でしたね。また、目指すゲームのかたちを追い求め、他ではやっていない取り組みを発表できた達成感がありました。
発表後は「こんなことをやっているんですね」と声をかけてもらったり、SNSでも反応があったりしました。普段、ゲーム開発者が表に出る機会がないなかで、技術や開発者にフォーカスして評価いただいたことが嬉しかったんですね。認められたような実感がありました。
やはり一回出ると、登壇への不安や障壁もだいぶ軽減されますし、あの手応えは開発者としても貴重なので。社内でも、一度出てまたエントリーする人は多いですね。

── 他に感じた、CEDEC登壇のメリットがあれば教えてください。

西田社外との関係性ができることもメリットです。CEDEC登壇をきっかけに他社の技術者とも知り合えるので、業界の最先端の話を聞けたり、その話に入れる自分にも少し自信が持てたりと、良いことは多いと思います。
また登壇をきっかけに知り合った方々が、翌年以降のCEDECで登壇したり、新作を出したりと、精力的に動いている様子を見て奮い立たされることもあります。

意欲を押し付けない。ライトフライヤースタジオならではのカルチャー

── 今後、CEDECをはじめとする発表や勉強の機会について、取り組んでいきたいことを教えてください。

西田CEDEC以外にも、ライトフライヤースタジオではUnityのカンファレンスでエンジニアが出たり、他社さんと共催の勉強会を企画していたりと積極的な試みをしています。ベテラン・若手に関わらず話してもらい、発表の経験を積んでもらえると良いなと考えています。
つまり発表の機会は、手を挙げればどんどん得られるわけです。自分としては、その経験を重ねて、「CEDECでも発表したい」と思ってくれる方が自然と増えたら嬉しいですね。
一方で、ライトフライヤースタジオとして「CEDECに登壇しましょう」「登壇を活性化する仕組みをつくりましょう」と強制はしたくない。あくまで本人の意欲があること、そこから自発的に手を挙げてやるスタンスを大事にしたいんです。
もちろん手を挙げた方へのサポートは惜しみません。「やらなければならない業務」には決してならないよう、自発的な循環を大切に、続けていきたいです。

── 自主性が肝、ということですね。

西田そうですね。また社内には高度な技術を有するメンバーが多いので、そのやり方を見たり、アドバイスをもらったりしながら実戦で実力をつけていくことも重視しています。CEDECでの勉強と、社内での実戦との掛け合わせで、今持っているスキル以上のものをどんどん身に付けられる環境とも言えるでしょう。
CEDECで学んだような、他の会社さんの良いところも積極的に取り入れる。つまり昔のやり方に固執せず、良いところは新しい要素として採用する精神がライトフライヤースタジオにはあります。だから、CEDECという機会をみんな大事にしているし、盛り上がるんですね。
ライトフライヤースタジオは、新しい技術を学んでスキルアップしたい、CEDECなどの場で発信してゲーム業界を盛り上げたい意欲がある方にはとても居心地が良い場所だと思います。このような環境でゲームづくりをしたい方とは、ぜひ手を取り合っていきたいです。

ライトフライヤースタジオでは一緒に働く仲間を募集しています

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