『へブンバーンズレッド』の面白さは"行間"に宿っている。企画スタッフが語る開発秘話

Wright Flyer Studios × KeyによるドラマチックRPG『へブンバーンズレッド』(以下『ヘブバン』)は2022年2月10日にリリースして以降、多くの人に楽しんでいただいています。そのおかげで、公式グッズの展開、コラボカフェの開催など、新たな試みも続々スタート。

今回は、ゲームの中だけに止まらず、グッズやコラボカフェなども含め『ヘブバン』を楽しんでもらうために、日々企画・開発をおこなうWright Flyer Studiosのゲームデザイナー陣5名にインタビュー。

『ヘブバン』の魅力を最大限活かすために工夫した点、開発時の裏話、そしてこれからの展望などをたっぷり話してもらいました。

小沼 勝智
Studio本部 / Studio 1部 / Game Design 2グループ ディレクター

2012年に入社し、エンジニアとして『踊り子クリノッペ』のテクニカルリードを担当。2014年からはプランナーに転身し、Wright Flyer Studiosにて『ららマジ』の立ち上げを牽引。メインストーリーの全ての演出、メインシナリオ、SE、BGM等サウンドのディレクションにも従事。『へブンバーンズレッド』ではディレクターとして、主にメインストーリーやイベントのプロット制作、演出に加え、カードイラストの企画などに携わる。

笹川 龍太
Studio本部 / Studio 1部 / Game Design 2グループ シニアマネージャー

2012年に新卒入社した後、コンサルタント業務などに従事。2013年にグループ会社へ出向し、プランナーとして『ミリオンブレイブ』、プランナーリーダーとして『不良遊戯 シャッフル・ザ・カード』に参画。2018年からWright Flyer Studiosに所属し『へブンバーンズレッド』チームへ。主にメインストーリーの実装、ゲームデザインチーム全体のマネジメントに携わる。

養田 直倫
Studio本部 / Studio 1部 / Game Design 2グループ / Game Design 2 チーム リードゲームデザイナー

2012年に新卒入社し、『海賊王国コロンブス』の企画に参入。Wright Flyer Studiosでは『消滅都市』のゲームデザイナー兼シナリオライターとして、バトルバランスの設計やキャラクター制作、メインストーリーのシナリオなどを担当したのち、ディレクターを経て『へブンバーンズレッド』チームに参画。同作ではバトルチームのマネジメントや、リードゲームデザイナーとしてゲームデザインや進行管理など全般を担う。

福沢 嘉琳
Studio本部 / Studio 1部 / Game Design 2グループ / Game Design 4 チーム シニアゲームデザイナー

2016年に新卒入社し、アイドル系IPプロダクトのプランナーとして活躍。2017年からはWright Flyer Studiosにて『アナザーエデン 時空を超える猫』や、『ダンまち〜メモリア・フレーゼ〜』にてプランナーからプロデューサーまでを経験し、『へブンバーンズレッド』に参画。運営チームのマネジメント、イベントやキャンペーン施策、運営スケジュールの策定、その他SNS運用など広報に関連する業務も担当。

岩見 祐哉
Studio本部 / Studio 1部 / Game Design 2グループ / Game Design 3 チーム

2011年に入社し、アニメ、アイドル系IPなど複数のゲームにおいてコンサルティングを担当。ビジネスディベロップメント全般の業務を経て、Wright Flyer Studiosに参画。『ダンまち〜メモリア・フレーゼ〜』の演出リードを経て、『へブンバーンズレッド』では演出チームを牽引している。

世界観やキャラクターの表現のためには妥協しない

── 『ヘブバン』の開発に関わるなかで、印象的だったことを教えてください。

小沼 勝智(以下、小沼)今回一緒にお仕事をさせていただいているKeyさん、原案とメインシナリオを手掛けている麻枝 准さんの姿勢が何より印象的でした。
麻枝 准さんのシナリオをスマートフォンRPGの体験として昇華させるのが我々Wright Flyer Studiosのミッションなのですが、麻枝さんは、Wright Flyer Studiosが提案したゲーム仕様を実現するために率先してシナリオを調整したりブラッシュアップしてくれるんです。
たとえ一度書き上げたものであっても、ゲーム体験をよくするためなら、大きな調整であっても受け入れてくださっています。
ひとつ例を出すと、最初『ヘブバン』ではシナリオをやりなおすことができなかったんですよ。一章のとある結末のようなギミックが実現できなかった。でも、こちらがシナリオをやりなおす仕組みをつくりたいと相談したら、複雑なフラグ制御でのシナリオ分岐も含め、意図に合わせて完全に刷新してくださいました。

岩見 祐哉(以下、岩見)シナリオに関連する話でいうと、自分はフルボイスの実装が記憶に残っています。
『ヘブバン』ではLuaというスクリプト言語を使用しているのですが、そこに組み込まれている最新のセリフのテキストをどうやってKeyさんに収録依頼するのか。その役務分担やスケジュール調整のための仕組みづくりのところですね。
Wright Flyer StudiosもKeyさんもクオリティには妥協しないので、一度実装してからのセリフの変更やボイスの追加も珍しくありません。そういったフレキシブルな調整を前提としたフローを組み上げながら、膨大なセリフを一つひとつ抜け漏れないように進行し、実装していくのは非常に大変でした。
フルボイスを実現できたことによって、キャラクターの感情が非常に伝わりやすい作品になりました。やって良かったと思います。

── 『ヘブバン』の開発で苦労した点を教えてください。

笹川 龍太(以下、笹川)キャラクターが主に行動する基地の賑やかさを出すのに苦労しました。最初に実装したときは、キャラクターが誰もいなくて画面に動きがない、寂しい空間だったんです。
ただ、舞台が基地とはいえKey作品でもあるので、学園のような賑やかさは表現した方が良いと考えました。そのために自由時間をつくって、様々なイベントやキャラクターを基地内に配置し、スクリプトでキャラクターを動かし、飽きない空間づくりを目指しました。

その後、画面をKeyさんにご覧いただきセリフをあててもらいました。おかげで、主人公の奥で他のキャラクターが喋っていたり、歩いているキャラクターがいたりという、目指していた賑やかさ、生活感を表現できたと思います。

岩見基地で印象的なのは、國見タマというキャラクターが自販機に興味津々な姿ですよね。あれは國見が新しいもの好きという性格だから生まれたというか。Wright Flyer Studiosが配置した意図をKeyさんにも理解していただき、そこから國見のセリフがつくられていったんですよね。

笹川そうです。國見は元々戦艦の艦長で、自販機自体が珍しいし、好奇心旺盛なところもある。それらを踏まえて、小沼さんのこの案を形にしました。

小沼キャラクターの性格やこれまでのストーリーを汲み取った配置をすると、「良いね良いね」とKeyさんが積極的に採用して、セリフにしてくださるんですよね(笑)。キャラが一人で転がり出して、それをみんなが肉付けしてKeyさんが最終的に仕上げる、という流れが結構ありました。

養田 直倫(以下、養田)自分は、『ヘブバン』として意識している“よくあるスマホゲーム感を抑えること”と、分かりやすい画面を実現することのバランスが大変でした。
例えば、ホーム画面ってスマホゲームには当たり前にあるものなんですが、『ヘブバン』では当初、ホーム画面が存在していなかったんです。

でも、何度か実施したユーザーテストで、やはりホーム画面がないとゲームをする上で分かりにくいという意見が多数出てきました。その後、操作のしやすさと『ヘブバン』の世界観を担保できるホーム画面の最適解を考えて、今のようになったという経緯があります。

福沢 嘉琳(以下、福沢)私もスマホゲームにこだわらないことを軸にしていました。『ヘブバン』のシステムはこれまでのスマホゲームとは違う部分が多く、「こういうゲーム体験だよね」と参考にできるものが少なかったんですよね。
そのため、例えばライフの設計をした際、スマホゲームだけでなくコンシューマーゲームやゲーム以外のアプリ等、選択肢を限定せずに広く模索しつつ、『ヘブバン』についてゼロベースで考えていきました。
ライフというのはダンジョンやプリズムバトル、交流などのコンテンツをプレイする際に必要なもので、一定時間経つと回復します。ライフの設計は『ヘブバン』に触れるペースに直結するので、強制感、もしくは待たせすぎている感なく、みなさんが気持ちの良いペースでプレイできる形を探りながら進めました。
その後実施したクローズドβテストで「ライフが足りない」という声を多くいただいたことで、『ヘブバン』で遊びたいというみなさんの熱量の高さに気付き、最終的にライフの数は5個、回復時間は4時間という今の形に落ち着きました。

── では『ヘブバン』の開発で大切にしていること、軸としている考え方を教えてください。

小沼シナリオ重視のゲームはこうあるべきだとか、スマホゲームはこうあるべきだという考えにとらわれないことです。本質を見失わずに進むことを大切にしていました。
『ヘブバン』ではキャラクターの魅力を最大化するために、例えば2Dの立ち絵のキャラクターが話す場面で、目線の動きが入っていたり、一人が話している途中で隣にいる人の表情が変わったりするんですね。

小沼こういった細かな表現を実現していくのは、膨大なシナリオを更新していく運営型のスマホゲームでは非常にチャレンジングでした。効率化やコストの観点を考えると手を出しにくいんですよね。
ではなぜ『ヘブバン』がこの細かな表現を全部採用するかというと、一人の人間としてキャラクターを捉えたときに、表情に動きがある方が自然ですし、魅力が最大化できるからです。こういった行間の表現は、シナリオゲームの中では一見無駄に見えます。
先ほど笹川さんが話していた基地の部分でも、シナリオで「宿舎から学舎に移動しよう」となったとき、一瞬で学舎へ画面が切り替われば問題ないですよね。でも『ヘブバン』は、わざわざ宿舎のドアを開けて外に出て歩き、学舎まで向かう表現を必ず挟みます。
この意図は、学生時代に友達と一緒に学校に行ったり、移動教室をしたりしたみなさんの体験の記憶を呼び覚まし、その臨場感をキャラクターの動きと重ねて捉えていただくことにあります。
一方で、ただ歩くだけだと本当につまらないゲームになってしまう。ここで、笹川さんが主導してつくった、歩いて楽しい基地が活きていると思います。

── たしかに、基地にはいつも色々なキャラクターがいますし、最近仲良くなったキャラクターとすれ違うとワクワクする。楽しげな話し声も聞こえてくるので本当に飽きないですよね。

小沼あと、『ヘブバン』のようにキャラクターの魅力で成立するIPにおいて、IP力を醸成することにもすごく価値があると思っていて。この「IP力を醸成する」ところの究極は、シナリオを読む部分ではなく、さっき言った行間のリアリティにもあるんじゃないかと自分は考えているんですね。
スマホゲームで、もしかしたらスキップされてしまうかもしれないシナリオの、行間に価値を見出して開発するのはとても大変だし、コストをかけるという判断には勇気がいります。
でも、それを実現するために、岩見さんを筆頭にみなさんが最大の効率化を果たし、『消滅都市』や『ららマジ』、『アナザーエデン 時空を超える猫』など様々なプロダクトで培ってきたものを詰め合わせて、ここまで到達できている。ここがWright Flyer Studiosのお家芸になってきているのかなと思います。
もちろん今後も、過去の作品で得たものを引き継ぎながら、行間の表現を大切にしていきたいです。

── 「行間」という表現がすごくしっくりきました。だからこそ、様々な場面でキャラクターの魅力が感じられて、作品に引き込まれる感覚があるんですね。

岩見ただ、行間のところって、どうして必要なのか問われたとき、答えに窮する部分でもあるんですよね。『ヘブバン』でも、必要性を考え直す機会が何度もあり、そのたびに「必要だよね」と残り続けたものがあります。そのひとつが、交流後のお風呂のシーンですね。

岩見当初は「何でお風呂?」と議論になることがあったんです(笑)。これを起案したのは笹川さんなんですが、このシーンって、キャラクターの交流ごとにバリエーションを持たせる必要があるから結構大変。でも、今もずっと残っているという。

笹川単純に、誰かと交流して仲良くなった後に、一緒にお風呂に入ったらテンションが上がるんじゃないか?という考えで試しにつくったんですよね(笑)。
岩見さんの言う通り、ここはストーリー上絶対に必要なものではない。でも、周りのメンバーが、このシーンの行間としての役割を感じてくれたのか「お風呂のシーンはあった方が良い」という結論になり、Keyさんにシナリオを書いてもらう流れになりました。

運営フェーズだからこそ、新しい驚きや感動を届けたい

── 『ヘブバン』のこれからについて、みなさんが楽しみにしていること、期待していることを教えてください。

笹川シナリオを担当する麻枝 准さんをはじめとするKeyの方々、そしてWright Flyer Studiosではアートやエンジニア、企画のみなさんが、本気でより良いものをつくるために動いています。それがたくさんの人に届けられて嬉しいですが、今後もより多くの方に遊んでもらいたいです。
あと『ヘブバン』に触れた方が感動し、制作に携わった人たちの想いや本気度を感じとってもらえたら嬉しいです。
というのも、前にとあるアニメ映画を観て、すごくうらやましいと思ったんです。その映画の戦闘シーンやクライマックスシーンが素晴らしくて、これは人に言われてつくれるものではなく、つくり手本人から芽生えた動機によって、自発的に生まれたものだと感じました。
作品から本気度が伝わってきて、感動したんですよね。その感覚でスタッフロールを見たら、その作品に関わったすべての人たちがうらやましいと思ったんです。『ヘブバン』も、そう感じてもらえる存在になりたい。そうなれるようにこれからもつくっていきます。

養田自分の担当しているバトル部分は、これからがはじまりだと思っています。今後はコンテンツも増えていくので、それをどのように面白く、キャラクターの特長を引き出しながら世に送り出せるかはすごく楽しみですね。
あと、先にシナリオプロットを読ませてもらっている身としては、今後のメインストーリーを実現していくのが本当に楽しみです。ゲームとしても、メインストーリーで新しいことをして、ワクワクしてもらえる方法を真摯に考えているので、そこに期待していただきたいですね。そして、自分たちと一緒に新しいことを考えたい方がWright Flyer Studiosに来てくれたら嬉しいです。

福沢『ヘブバン』はリリース後、予想を超える大きな反響をいただき、そのおかげでチームも拡大しています。
自分の担当する運営チームは、『ヘブバン』チーム全体でつくりあげたものを正しくお届けし、更に楽しんでいただけるようにキャンペーン施策を展開するなど、より拡大していくこの運営フェーズにおいて一層頑張らねばと感じています。これまで以上にみなさんの声に応えつつ、新しい驚きを届けていくことを自分も楽しみにしています。
あとは、ゲームだけではなく、コラボカフェやグッズなど、ゲーム以外のところでも多様に展開できるようになってきました。ゲームも日常に添えていただきつつ、リアルな体験もみなさんの生活に取り入れていただけたらなと思います。

── 今後、採用も加速していくと思いますが、どのような方と一緒に働きたいですか?また、『ヘブバン』チームで働くなかで伝えたいポイントがあれば教えてください。

小沼これからどんどん『ヘブバン』はパワーアップしますし、福沢さんが言っていたように多角的に楽しめる企画も増えています。それによって広がっていく世界を一緒につくる熱量やガッツがある方、そして制作を楽しめる方と一緒に働きたいですね。
Wright Flyer Studiosはコミュニケーションが活発なので、自分たちでゲームをより良くしていくやりがいも保証できます。『ヘブバン』の世界を一緒に盛り上げていきたいです。

岩見自分は常々、この会社はロジカルだなと思っていて。もちろんクリエイティブに対して真摯であることは前提なんですが、リリースするまでの過程でユーザーさんの声を何度も受け、客観的なデータをもとにゲームをつくる姿勢は崩さない。
企画やゲームの仕組み、画面の仕様として尖ったことはたしかにやっていても、それを届けるためにどうするかというロジック部分もきちんと持っている。ただパッションだけではないところが体現されている会社だと思います。
あと、『ヘブバン』はこれから、開発ではなく運営のフェーズに移行していきます。そうすると、飽きられないために新体験を生み出すような企画が必要になってくる。新しくジョインしてくださる方には、「もっと面白くできる方法」をたくさん考えられる環境をお約束します。
おそらく、面白さを追求して自分のやりたいことを体現していくと、結果的に自分の市場価値も高まると思うんですよね。良い作品がつくれて、自分のスキルも上がって、全体がハッピーになるという(笑)。Wright Flyer Studiosはそういうところだと思います。

WFSでは一緒に働く仲間を募集しています

同じカテゴリーの記事