期待を超える感動をファンに届けたい『魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra』の3Dアート制作の裏側

2025年3月にリリースされた『魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra(以下、まどドラ)』(配信:アニプレックス)は、テレビアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズを原作としたゲームアプリです。

本作の配信は株式会社アニプレックス、開発は株式会社WFSの第4スタジオに所属するポケラボと株式会社f4samuraiが共同で行っています。ポケラボは2025年1月にWFSと統合し、現在はライトフライヤースタジオ傘下のゲームブランドです。
今回は『まどドラ』の3Dクリエイティブを担当するメンバーに制作の裏側と魅力を聞きました。

下澤 浩二
第4スタジオ クリエイティブ2グループ シニアマネージャー

コンシューマの開発会社およびオンラインゲームの開発会社を経て、2015年にポケラボ入社(現:WFS)。2025年1月よりライトフライヤースタジオの第4スタジオに所属。これまで複数タイトルの3Dモデリングやアニメーションを担当し、『SINoALICE ーシノアリスー』や『戦姫絶唱シンフォギアXD UNLIMITED』ではアニメーション制作を手がけた。現在は、クリエイティブ2グループのシニアマネージャーとして3Dチームを牽引している。

小森 英和
第4スタジオ クリエイティブ2グループ 3Dチーム アートディレクター

新卒で入社した会社にて3D制作に携わり、2D背景、キャラクターアニメーション、MMOでのキャラクターモデル制作など、企画から制作まで幅広く経験。2012年よりポケラボ(現:WFS)に入社し『戦姫絶唱シンフォギアXD UNLIMITED』ではアートディレクター『アサルトリリィ Last Bullet』では背景制作や制作サポートなどを担当。2021年より3Dチームに参画、現在はライトフライヤースタジオの第4スタジオに所属し、『まどドラ』のアートディレクターとして3Dチームの品質管理を担っている。

3Dアート制作の現場は、日進月歩

── 『まどドラ』リリースおめでとうございます! まずは、テレビアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズの世界観を3Dゲームで表現すると聞いた時の率直な感想を聞かせてください。

下澤2021年に3Dチームが発足し、発足後初となるプロダクトリリースが『まどドラ』だったんです。IPとしての魅力はもちろんですが、『魔法少女まどか☆マギカ』を3Dゲームにするのか」と驚いたのが率直な感想でした。

というのも『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズは、アニメーションとして確立されているコンテンツです。それを3Dで表現するとなると、全方位、いたるところから見ても魅力的に映るような表現が求められます。期待してくださるファンの方が多いことは容易に想像ができましたし、3D表現がゲームの評価にもつながるので難しさはありましたが、こだわりを注いだプロダクトではありますね。

── 多くのファンがいるからこそ、そのコンテンツに対するお客さまの期待も高まるのは必然とも言えますね。どうしてもハイレベルなゲームを期待してしまうというか……。

小森そうですね。『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズのファンだけでなく、幅広い年代の方がゲームに触れる機会が多くなり、市場におけるお客さまの目が肥えているともいえます。スマホゲームだけでなく、コンシューマゲームのクオリティも日々進化しており「3Dは、これくらいのクオリティだよね」とお客さまが期待する水準も高くなってきています。

ゲームを制作するクリエイターたちの意識も、今ある技法で制作するのではなく、常に先を行く表現を追求することが求められているのではないかと思います。

── 2025年1月より株式会社ポケラボはWFSと統合し、「ポケラボ」はライトフライヤースタジオ傘下のゲームブランドとなりました。現在はどのような体制で制作をされているのでしょうか?

下澤ポケラボに所属していた3Dチームのメンバーは、ライトフライヤースタジオの第4スタジオに所属し、制作を行っています。全体の人数は、約20〜30名ほど。キャラ、背景などセクションごとにわかれて制作が行われています。私は3D領域のシニアマネージャーとして、チームを統括する役割を担っています。

小森私はチームの中で、アートディレクターとして主にアートクオリティの品質管理を担当しています。このプロダクトは、株式会社f4samuraiさまとの共同開発なので、連携は不可欠で安定的なクオリティを提供できるようマネジメントを行っています。

劇団イヌカレー(泥犬)先生の世界観を“どのように”3Dで表現するか?

── 下澤さんは過去の取材で「3Dチームではお客さまの期待値を超えるものづくりをしたい」とお話しされていました。『まどドラ』においては、どのようなことを意識してものづくりに向き合っていたのでしょうか? こだわった部分をお伺いしたいです。

下澤劇団イヌカレー(泥犬)先生の世界観をいかに自分たちなりに表現するか? は意識した部分のひとつです。劇団イヌカレー(泥犬)先生の世界観をそのまま表現するだけでは、お客さまの期待値に“応えている”状態。私たちが目指すのは、期待値を“超える”ものづくりなので、どう要素をプラスして表現するかは大切にしていました。そのためにも、劇団イヌカレー(泥犬)先生のクリエイティブを要素分解し、試行錯誤する時間は多く費やしています。

例えば、お菓子の魔女が出てくるフィールド(魔女結界)があるのですが、結界の中に実写の表現を織り交ぜることで、空間をあえて平面的に見せています。この“違和感”が劇団イヌカレー(泥犬)先生らしさを表現するポイントになっているのではないか? と。

自分たちが感じた劇団イヌカレー(泥犬)先生の表現における“違和感”をどのようにゲームの世界に落とし込んでいくかは、とても大変でしたが工夫しがいのある制作になったと感じています。

── 言われてみれば……! クッキーやフォークなど写真素材を3Dにしているのは面白いですね。小森さんがこだわった部分もお伺いしたいです。

小森魔法少女たちの敵として登場する魔女は、ゼロから3Dで制作しているんです。原作ファンの印象はそのままに、むしろ期待値を超えるためのさまざまな工夫や違和感を与える特殊効果を入れて3D表現をしました。

小森また、魔女の恐怖感や異質感をより際立たせるのが魔女結界となります。
特徴として原作の絵柄にもアニメ塗っぽい簡易な結界、劇団イヌカレー(泥犬)先生のコラージュ満載の結界、見滝原のようなリアル調の背景など1つの作品の中に様々な表現があり、画一的なルールのようなものがないため、再現難易度が高く苦労しました。

違和感や異質感を演出するためにあえて、劇団イヌカレー(泥犬)先生のコラージュ画像などはライトの影響を受けないようにし、影響度合いなどもパラメータで調整できるようにしています。
また社内テクニカルアーティストに相談し、どんな見た目でも対応できるような汎用的な特殊シェーダーや、1箇所でしか使用しない特注の専用シェーダーなども制作していただき各々再現しています。

── 当たり前の事かもしれませんが、ひとつのシーンだけでものすごい技術と時間が使われていたと知り、驚きました! とくに魔女や魔女結界での3D表現はこだわらざるを得ない部分ですね。

小森魔女、魔女結界に関しては、全て表現設定がユニーク。より再現度を上げるために、配信元である株式会社アニプレックスさま、共同開発先である株式会社f4samuraiさま、そして原作の造形作家を担当した劇団イヌカレー(泥犬)先生と何度もコミュニケーションをとり、設定と照らし合わせながら丁寧に制作していきました。

エフェクトに関しても、キャラクターと魔女でテイストを明確に差別化し、各々の個性を際立たせるよう意識して制作しています。
キャラクター専用エフェクトに関しては原作再現を始め各キャラのモチーフや、メインカラー(ソウルジェムのカラー)などキャラと紐付いた要素となるものを最大限に活かし一層キャラの印象が深く残るよう意識しました。

魔女専用エフェクトは極力発光する要素は避け、専用シェーダーを駆使してアナログ感(絵の具っぽさ)や質感を表現したり、モヤ感/ボケ感などを調整し、あえてゲームエフェクトっぽさが全面に出ないようにする事で劇団イヌカレー(泥犬)先生の世界観から外れない、より馴染むよう制作しています。

── 3Dの演出面についてのこだわりも教えてください。

小森演出面に関しては、追体験を描く中でアニメや2Dゲームの焼き直しのような印象にならないよう、3Dならではの価値を作るため、立体空間を生かしたカメラや一人称視点なども用いて演出しました。

必殺技演出ではゲーム機能としての演出だけではなく、キャラクターの魅力を最大限に伝えるカットシーンとして、どうしたら魔法少女一人ひとりの魅力を伝えられるかを細部まで考えぬいて制作しています。
カットシーンムービーではインゲームの制約にとらわれないリッチな映像として、とにかく「かっこいい」と思わせるアクションや大胆なカメラワーク等をフレキシブルに考えコンテ段階で精度を上げていました。

ユーザーの期待以上のクオリティで提供することが大前提

── 細部にまでこだわりを貫かれているんですね。原作がある作品を表現していく中で心がけていたことはどんなことでしょうか?

小森下澤さんがお話ししていた部分とも重なりますが、どうやったらキャラクターをもっと魅力的に表現できるか? にフォーカスしていました。ここは3Dチームのメンバー全員が共通認識としてこだわった部分だといえます。

下澤「お客さまが想像する、まどか☆マギカの世界を3Dで表現し、さらに越えていく」ことが僕たちの目的でありゴール。「キャラクターが原作と似ていない」「世界観が違う」と感じられただけでもお客さまはゲームから離れてしまうので、お客さまが納得できるクオリティを大前提に、そこからどう世界観を支えていけるかを心がけていました。

また、これまでの『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズは、リアル等身かつ3D化したコンテンツが今までなかったんです。一言に「こだわった」といっても、ファンの方がイメージするまどかたちを、どう3Dで表現するか? 多くの試行錯誤がありました。どの角度で見ても、アニメーションのどの瞬間を切り取ってもキャラクターが魅力的に映るように、3Dキャラモデラーだけではなく、2Dデザイナーの視点も取り入れながら制作しています。

── リリース後、改めて開発期間を振り返ってみていかがですか?

下澤開発当初は、3Dの開発実績がない中でスタートしました。しかし2Dや3D、テクニカルアーティストなどの職種や、若手ベテランなどの立場も関係なく、互いに協力しあいながら自身の役割に責任をもって進めてくれたおかげで無事リリースに辿り着けたと感じています。何度もリトライを重ねることもありましたが、振り返ってみれば、メンバー全員がチャレンジを続けてくれたことも影響し、PDCAを回すサイクルもとても速かったですね。

統合前からWFSで他の3Dタイトルを開発しているクリエイターにも協力してもらい、グリーグループの総力を結集して本タイトルのリリースまで辿り着くことができたと思います。

小森第4スタジオは、雰囲気が良く、どんな声にも耳を傾け拾ってくれるスタジオだと思っています。メンバー同士で自主的に勉強会を開催していますし、お互いに高め合っていける文化が根付いているのもこの会社の好きなところです。

3Dチームでは、下澤さんが目標地点でしっかりと旗を掲げてくれているので、各メンバーが個性を活かしながらお客さまの期待を超えるクオリティをお届けできるよう、日々努力し続けています。クリエイターとしても、一人ひとりの個性をしっかり尊重してくれながら挑戦できる環境が整っているので、とても働きやすいと思いますよ。

まだまだ成長の伸びしろがある第4スタジオ。挑戦し続けられる強いチームを目指して

── 最後にお二人がこれから挑戦してみたいこと、チームとしての目標や展望をお聞かせください。

小森今回3Dプロダクトに挑戦するのが、第4スタジオとしては初めての試みでした。そのためまだ3D組織としては伸びしろがあると感じています。今はその組織をより強固なものにしていくことが直近の目標です。

また、今年の1月からグリーグループにおいてライブサービスゲーム事業を担っていた3社がWFSに統合されました。それにより新たなチャレンジの場が多々生まれるだろうと楽しみな部分でもあります。これまで以上により良いコンテンツをWFSとして協力しながら制作したい、そしてそれをより楽しみたい、と思っています。

下澤今の組織はチャレンジに対して、とてもポジティブ。この文化を大切にしながら、より強いチームを目指していきたいですね。

第4スタジオでは、もともと2Dアニメーターだった方が、現在は3Dアニメーターとして活躍している人もいます。彼はチームの今後の展望を理解したうえで、「自分も3Dもできるようになりたい」と、業務時間のなかで時間を捻出しながら、チャレンジしたい意向を伝えてくれました。周りのメンバーも、彼の制作物に対して、積極的にフィードバックをおこない、協力を惜しまずサポートしてくれた結果、その経験や取り組みが、今の『まどドラ』の制作に大きく活かされています。彼のように、チャレンジに対してポジティブに取り組めるよう、今後も組織としてもサポート体制を整え、背中を押せる環境づくりを大切にしていきたいですね。

── 挑戦することで、成長もできる。とてもいい雰囲気なんですね!

下澤3Dチームのメンバーも統合に対してとてもポジティブで、まだまだ各組織で大きな伸びしろがあると感じています。各スタジオとの連携から生まれるシナジーは、これから入社する方にとって、とても刺激になると思っています。そんな各社の強みを活かして、より今以上に強い組織になれれば、きっと業界トップのゲーム会社になれるのではないかなと思っています。

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