多様な個がひとつのビジョンに向かい 新しい驚きを生み出す。

『消滅都市』『アナザーエデン』など多くの大型タイトルをリリースしてきたグリーのWright Flyer Studios事業を2020年7月に承継し、新たに発足した株式会社WFS。
WFSにはどんなカルチャーがあり、何を目指しているのか。代表取締役社長の井坂友之へのインタビュー。

井坂 友之
グリー株式会社 上級執行役員 兼 株式会社WFS 代表取締役社長

インターネットサービス会社を経て、2007年グリーに入社。広告、芸能メディア、ゲームプランナー、プロデューサー、新規事業立ち上げや海外支社の設立、子会社CEOなどを経て執行役員に。2020年7月より株式会社WFSの代表取締役社長に就任。

ベンチャーとも大企業とも違う、
テクノロジーをベースにしたクリエイティブカンパニー

── WFS設立の経緯を教えてください。

井坂 友之(以下、井坂)2014年にグリーのネイティブゲーム専門の部門として、Wright Flyer Studiosがつくられ、第1弾としてリリースした自社IP『消滅都市』がヒットしました。その後、自社IPや他社IPなど複数本のヒットタイトルを開発しながら、国内マーケットが成熟するのを見据えて、海外マーケットも開拓しつつ、組織体制を強化するなど、立ち上げるフェーズと拡大するフェーズ、まとめるフェーズも経験した上で今の組織体制になっています。
そういった中で組織や事業規模も大きくなり、独自のカルチャー色も出てきたこともあり、より自律的な経営体制に移行するためにWFSへ事業承継をしました。

── WFSの色とはどんなものなのでしょうか。

井坂WFSはテクノロジーをベースにしたクリエイティブカンパニーです。テクノロジー組織であり、クリエイター組織であるという、絶妙に相反するものも共存しているのが特徴です。ロジカルな部分とエモーショナルな部分が良い塩梅で混ざって生まれるカルチャーがWFSらしさだと思っています。また、グリーグループという大きな安定資本の中での自律経営子会社という大企業ともベンチャー企業とも違うスタンスを持っています。

── 代表取締役の就任にあたっての想いと経営方針をお聞かせください。

井坂僕はビジネスプロデュース業を生業にしてきたので、今はWFSをいかにプロデュースしていくかに注力しています。テクノロジーにしろ、クリエイティビティにしろ、個人が生み出すものではあるのですが、それを増幅させるのがチームです。WFSには新卒入社の社員から、さまざまな業界から転職してきた社員まで、500人以上の社員がいます。事業領域も広く、それぞれに活躍の場があると思っています。個を生かしつつ、チームとしての力をいかに上げていくか。経営についても自分ひとりでやるのではなく、マネジメントメンバーに役割分担と権限委譲をした「チーム経営」を意識的に行っています。

人はそれぞれ違うことが大前提。
その先にリスペクトがある

── 今回、新たにVISION「新しい驚きを、世界中の人へ。」とVALUE「RESPECT / RETRY / REFLECT」が策定されました。なぜ、ビジョンやバリューが大切なのでしょうか。

井坂僕はグリーの創業期に入社したのですが、もともとグリーはPCからスタートしています。その後、フィーチャーフォンへと変わり、スマートフォンの時代となり、その都度事業転換を行ってきました。企業である以上、長期的にみると市場や競争環境の変化によって事業が変わることは当たり前ですし、業績も良いときもあれば悪いときもあります。だからこそ、ぶれることのないビジョンやバリューを大切にした組織にしたいと思っています。

── VISIONについてお聞かせください。

井坂WFSには、なぜこの会社を設立したのか、何をやりたいのかを明文化した「設立趣意」があります。これは、2014年Wright Flyer Studios立ち上げの際、代表だった荒木英士がつくったものです。荒木とはグリー創業期から一緒にやってきた仲で、グリー海外展開の際には彼はアメリカへ、僕は韓国へ、共に海外事業を経て今に至ります。立ち上げ当時、僕は別の子会社で社長に就いていてそこにはいなかったのですが、世界を舞台に戦いたいということはずっと意識していましたし、「設立趣意」には100%賛同しています。その「設立趣意」をぎゅっと凝縮したのがWFSのVISION「新しい驚きを、世界中の人へ。」です。

参考:設立趣意(Wright Flyer Studios設立にあたって)

── VALUEは「RESPECT / RETRY / REFLECT」の3Rですね。どんな想いが込められているのでしょうか。

井坂まず、「RETRY 挑戦する、何度でも。」についてですが、我々がやっているゲーム事業、コンテンツビジネスは当たり外れが大きく、かなりの確率で失敗があります。僕を含めたマネジメントメンバーも常に成功してきたわけではなく、何らかの失敗を経て今があります。もし仮に挑戦が失敗した時にやめていたら、その挑戦で培った技術は続かないし、そもそも打席に立ち続けなければコンテンツが当たることもありません。
ただ、何度も「RETRY」だけをすればいいわけではなく、重要なのは前回の経験を生かしてより高みを目指すことです。「反省」は良くなかった点を改めるイメージですが、WFSのバリューであるReflectは「内省」という意味で、良かったことも、良くなかったことも自身で見つめ直して受け入れ、より高みを目指し次に繋げたい。という想いで生まれています。

── 「RESPECT 互いを尊重し、わかりあう。」についても教えてください。

井坂先ほどの2つのバリューの大前提として「RESPECT」があります。ゲームは、いろいろな人の個性やスキルを重ねあう中で創られるものであり、「RETRY」も「REFLECT」も結局チームでやらなければいけないからです。ただ、それぞれに想いや領域が違うクリエイター同士が仕事をするわけで、そこにはぶつかりあいも生まれます。それをうまく融合させるために必要なのが、互いに「RESPECT」を持つという姿勢です。
究極、わかりあえないところもあると思います。わかりあえないということをわかりあう、そもそも人と人は違うということを受け入れ、認める。その上で率直に意見交換し、同じビジョンに向けてプロとして仕事をする姿勢になってほしいという考えでこのバリューになっています。

── WFSは職種、国籍含めて多様性に富んでいるそうですね。

井坂そうですね。目指すべきことを共通化した上で、そこに向かう力は多様性があっていいと考えています。「RESPECT」の「尊重」というワードは文脈を間違えるとお互いが譲りあったり、妥協しあったりするといった意味に誤解されてしまう可能性もあります。でも、決してそうではなくて、多様性を大前提にお互いが個として認識しあう。ただ、それだけではバラバラで組織として成立しないので、同じビジョンを目指して共に仕事をするということです。

── ビジョンやバリューはどのようにして策定されたのでしょうか。

── マネジメントメンバーで合宿を行い、これまでの社史を振り返りながら議論をしました。その際、重視したコンセプトはバリュー文言を策定することよりも、”どう定着させるか”ということです。覚えやすく、経営メンバー含め誰もが普段の会話やSlackのスタンプなどで使えるものにしようと。長いビジョンやバリューを策定しても、掲げているだけでは意味はありません。経営メンバーもスタッフも普段の会話の中で「リスペクト足りてる?」「リトライしよう」「次の施策に向けて一旦リフレクトしよう」といった感じで生きた共通言語として自然と使われるようになっていくことが重要だと考えています。

新しい驚きを世界中に“届ける”

── WFSならではのものづくりへのこだわりを教えてください。

井坂コンテンツは、クリエイター個々の環境や人生経験をもとにして内発的に生まれるものです。そういった意味では多くは日本に住み、日本のコンテンツの影響を受けてきた我々がつくるものはおのずと日本色が強くなりますよね。
つまるところ、自分たちにつくれるものしかつくれないわけですが、それに自信を持って世界に打ち出しています。AmazonやNetflixといったオンライン動画サービスが普及したことで、日本のコンテンツもグローバルに広まってきました。そうした時代、自分たちがつくれる最高のものを届けることで世界のユーザーに驚きを与えられると思っています。

── WFSはゲームの開発・運営を行うコンテンツ事業以外にもソリューション事業、プラットフォーム事業を展開していらっしゃいます。

井坂ゲーム開発で培ったテクノロジーやデジタルマーケティング、データ分析、ユーザーを楽しませるノウハウは、異業界へも応用ができると思っています。WFSではデジタル領域に対して法人向けソリューションサービスを提供していますが、引き合いは順調に増えています。
一方、成熟する国内マーケットにおけるマーケティングの変化の機微をとらえて開発したのがファンコミュニティ・プラットフォーム「Fanbeats(ファンビーツ)」です。プラットフォームを通じてファンコミュニティを形成し、クリエイターのマーケティング活動を支援していくもので、コロナ禍の影響もあってこちらも順調に伸びています。

── Preferred NetworksとAI技術を活用した共同開発もなさるそうですね。

井坂ゲーム産業発展の歴史は常にテクノロジーの進化とセットなので、最新テクノロジー領域には常にアンテナを張っていたいとは思っています。今回は縁あってその中のAI分野におけるトッププレイヤーと組ませて頂いたということです。ただ、もちろん最新テクノロジーは追い続けますが、テクノロジーの研究だけをしたいわけではありません。そこにクリエイティビティを合わせ、新しい驚きを、世界中の人へ”届ける”というのがWFSとして重要だと考えています。

参考:Preferred NetworksとAI技術を活用した共同開発

── 今後目指すことをお聞かせください。

井坂「新しい驚きを、世界中の人へ」届ける手段は、時代によって変わると思っています。今はスマートフォンが一番大きいマーケットですが、もしかしたら未来はARグラスが流行っているかもしれないし、これまでとはまったく違うデバイスが出てくる可能性もあります。WFSとしてコンテンツを創り続けることに変わりはありませんが、時代やユーザーの変化にあわせて媒体と手段、ビジネスモデルは柔軟に変えていくでしょう。

── ゲームでは、既存のアニメのゲーム化など他社のIPのほかオリジナルも手掛けていますが、今後はどのように展開されていくのでしょうか。

井坂基本的なスタンスとしてはオリジナルIPも他社IPもバランス良く開発していきます。その比重は時代によって変わるとは思いますが、ユーザーが求めるもの、自分たちが創れるもの、未来を見据えて描きたいもの、挑戦したいもの、ビジネスとして成立するもの、など様々な要素の交錯点を探求する形です。
市場環境的に自社オリジナルタイトルをつくっている会社はずいぶん少なくなってきたとは思いますが、ここはビジネスを超えた気持ちのところというか、自分たちのアイデンティティのようなものですから、どんな形であれ何かしらのオリジナルはWFSとして創り続けると思います。

── 最後に、WFSで働く魅力についてあらためてお聞かせください。

井坂テクノロジーはゲーム業界に限らずよりデジタル化していく今後の世界に置いて必要なものだと思っています。同時に、便利なテクノロジーだけでは動かせない人の感情、人のクリエイティビティというのも大事だと思っています。WFSという組織ではこのふたつが混じり合った体験ができるのが魅力かなと。最新テクノロジーに触れたい、コンテンツも愛している、つくりたい。そんな人たちが活躍できる場です。